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公正証書遺言の作り方と費用|「二重払い」の誤解にお答えします

2026年6月29日by 代表 髙岡宏

公正証書遺言の作り方と費用|「二重払い」の誤解にお答えします

公正証書遺言はいくらかかり、どう作るのか。費用は公証人手数料だけではありません。司法書士に頼むと二重払いになるのか、自筆+保管で足りる人と公正証書が要る人の違いまで、福岡の現場目線で整理します。

公正証書遺言の作り方と費用|「二重払い」の誤解にお答えします

前回のコラムその遺言書、使えないかも——自筆遺言の落とし穴では、自筆の遺言が「書けても使えない」ことがある、という中身の問題をお伝えしました。

では、どうすれば確実な遺言になるのか。その有力な答えが公正証書遺言です。ただ現場では、決まって三つの疑問で足が止まります。結局いくらかかるのか、自筆+法務局保管で十分ではないか、司法書士に頼むと二重払いではないか。この記事はその三つに正面からお答えします。先に結論だけ言えば、費用は公証人に払う額だけではありません。

相談の場でも、最初に出てくるのはたいてい「公正証書って高いんでしょう」「自分で書いて保管所に預ければ足りるのでは」というお声です。お気持ちはよく分かります。ただ私たちが現場で見てきたのは、目先の数万円を惜しんだ結果、残されたご家族が手続きのやり直しや話し合いに何倍もの時間と費用を費やす——いわゆる安物買いの銭失いになってしまう例でした。費用は、払うタイミングが今か後かの違いでもあるのです。

公正証書遺言とは——「形式の安全装置」

公正証書遺言は、法律実務の経験を積んだ公証人が、証人2名の立会いのもとで作成する遺言です。利点は三つ。方式の不備で無効になるおそれが極めて低いこと、家庭裁判所の検認が要らず相続後すぐ手続きに進めること、原本を公証役場が保管するため紛失や改ざんの心配がないことです。作成件数も増えており、2024年は12万8,378件と過去最多でした。

ただし、これらはあくまで形式の確実さです。どう書けば家族がもめないか、不動産が登記で通るか、という中身までを保証するものではありません。中身の落とし穴は自筆遺言の落とし穴のコラムを、何から始めるか迷う方はエンディングノートと遺言書の違いもご覧ください。

作り方——公証役場での流れ

手順はおおむね次のとおりです。(1)公証役場へ連絡(士業や銀行経由でも直接でも可)、(2)誰に何を渡すかのメモと必要書類を提出、(3)公証人が案を作り修正を反映、(4)作成日を確定、(5)当日、証人2名の前で内容を口頭で述べ署名して完成します。

当日は実印・手数料・証人の本人確認資料を持参します。必要書類は、遺言者の印鑑登録証明書、相続人との続柄が分かる戸籍、不動産があれば登記事項証明書と固定資産評価証明書などです。

体が不自由な方や入院中の方のために、公証人が自宅や病院へ出向く出張作成もあります(手数料は割増になります)。外出が難しいからとあきらめる必要はありません。

費用——「目安レンジ」で正直に

費用は二つを分けると分かりやすくなります。公証役場に払う公証人手数料と、それ以外(証人の謝礼・戸籍などの実費・専門家に頼む場合の報酬)です。総額はこの合計になります。

公証人手数料は全国共通のルール(公証人手数料令)で決まり、福岡の公証役場でも同じです。財産を受け取る人ごとに価額に応じて算定して合算し、さらに遺言1通につき遺言加算が乗ります。この遺言加算は2025年10月1日の改正で1万3,000円になりました(改正前の額ではありません)。

たとえば数千万円規模の財産・不動産1件・相続人2名程度なら、公証人手数料の目安に証人謝礼(1名あたり数千円〜1万円前後)と戸籍などの実費(数千円規模)が加わり、専門家に依頼すれば別途報酬がかかります。総額はおおむね数万円から十数万円に収まることが多いものの、財産額や内容で変わります。

これらは2026年6月時点の目安です。正確な額は最寄りの公証役場・専門家にご確認ください。なお相続税など税金の判断は税理士にご相談ください。

「司法書士に頼むと二重払いでは?」にお答えします

ここが最大の疑問だと思います。結論から言うと、司法書士報酬は公証人手数料への上乗せ(二重払い)ではなく、公証人が引き受けない別の仕事への対価です。役割が違います。

公証人がやること——文案を法的な文書に整え、適法性を確認し、原本を保管する。やらないこと——ゼロから中身を設計する、不動産を登記簿どおりの精度で特定する、相続後の登記まで見通す。

とくに不動産の特定は見落とされがちです。遺言に「自宅」「○○の土地」と住所で書いても、住居表示と登記簿の地番は一致しないことが多く、そのままだと相続登記の段階で止まりかねません。司法書士は事前に登記事項証明書を取り、登記簿の表示どおりに条項を起こします。公証人が職権でここまで調べることはありません。

つまり司法書士報酬は、(1)予備的条項などを含む中身の設計、(2)不動産の正確な特定、(3)遺言執行者として将来の登記まで一気通貫で進めること——この三つへの対価です。

なお、遺言に入れる不動産が未登記建物だったり、現況や地積が登記と食い違っていたりする場合には、表示登記が前提になることがあります。クロニクルは司法書士と土地家屋調査士の両方を持つため、こうした不動産が絡む場面でこそ一度に確認できます。

実際の相続登記の現場でも、遺言に書かれた不動産が普段使う住所(住居表示)で記されていたために、どの土地・建物を指すのか登記の上で特定しきれず、手続きが止まりかけた例があります。逆に、作成前に私たちが登記簿を取り寄せて地番や家屋番号まで確認しておいたことで、相続後の名義変更までつまずかずに進められた例もあります。不動産登記は、司法書士という国家資格がわざわざ置かれているほど専門的な分野です。だからこそ、遺言に不動産が含まれるなら、その作成の段階から司法書士に相談しておくことに大きな意味があります。

自筆+法務局保管(3,900円)で足りる人/公正証書が要る人

費用だけ見れば、自筆+法務局保管(1件3,900円・検認不要)のほうが安く済みます。これは事実です。では誰なら自筆で足り、誰なら公正証書を考えるべきか。次の問いに○×を付けてみてください。

  • 不動産がある(または登記簿と現況にズレがありそう)か?
  • 相続人が複数いる、または疎遠な相続人がいるか?
  • 配分に偏りがあり、もめる芽(遺留分など)があるか?
  • 「もし先に亡くなったら」に備える予備的条項を入れたいか?

○がほとんど付かない(預貯金中心でシンプル・相続人が少なく対立の芽がない)なら、自筆+保管でも十分なことが多いでしょう。一方、○が複数付くなら、公正証書で中身まで固めておく意味が大きくなります。なぜ自筆だと中身で詰まりやすいかは自筆遺言の落とし穴のコラムで詳しく書いています。

ひとつ正直に補足すると、公正証書にしても遺留分の問題までなくなるわけではありません。公正証書は形式を固める手段であって、争いの芽そのものを消すものではない、という点はおさえておいてください。

まとめ——「自分はどちらか」を整理する入口に

公正証書遺言は形式の安全装置です。そこに中身の設計と不動産の正確な特定が加わって、はじめて家族が迷わず動ける遺言になります。費用は公証人に払う額だけではなく、誰が中身を引き受けるかで決まる、という視点を持っていただければと思います。

遺言は、判断力がしっかりしているうちに整えておけるものです。元気なうちに一度ご自身のケースを整理する——その入口としてお考えください。配分でもめそうな場合は弁護士、税金は税理士の領域です。クロニクルは手続きの支援・書類作成・登記・遺言執行を軸にお手伝いします。

その整理の入口として、クロニクルではご家庭ごとの財産と分け方の論点を洗い出す生前対策コンサル——いわばご家庭の健康診断——を承っています。

最後にひとつ。あなたの遺言、その不動産は登記が通る書き方になっていますか。一度、ご自身の手元の財産を思い浮かべてみてください。

思い浮かべて迷いが出たら、その論点整理からお手伝いします。お気軽にご相談ください。

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